ブックタイトル電子版 多聴多読マガジン Vol.56 2016年06月号 ver 1.0.1

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電子版 多聴多読マガジン Vol.56 2016年06月号 ver 1.0.1

この人、投資詐欺で推定3億4,000万円も稼ぎ、嘘がばれて民事訴訟で日本の裁判所から3,600万円の賠償を命じられているが、いまだに一銭も払っていないという。なぜか。この人の資産は国内になく、offshore(国外)の租税回避地にあるからだ。ちなみに租税回避地とは、もともと法人税率がべらぼうに低く、かつ主要国と司法協力の取り決めを結んでいない国や地域をさす。そういう場所に資金を移しておけば、本国で訴追されても資産を差し押さえられる心配はない。そして膨大な「パナマ文書」を作成した法律事務所モサック・フォンセカは、何らかの理由で租税回避地を使いたい人や団体向けにダミー会社の設立を手がけ、しかるべき手数料を得てきたにすぎない(ただし、それなりに後ろめたいであろう顧客からの手数料は相当な額にのぼるはずだ)。法律事務所の顧客の「秘めた悪意」この法律事務所が「自分たちは何も悪いことをしていない。悪いのは当社のサーバーに侵入し、データを盗んだ何者かだ」と主張しているのは、ある程度まで正しい。ただし今後の捜査で「顧客の秘めた悪意を知りながら」協力していたことが立証されれば、この法律事務所も訴追される可能性がある。「顧客の秘めた悪意」とは何か。顧客が政治家であれば、国民の財産を巧妙にかすめ取って私腹を肥やそうというエゴイズムだろうし、石油で潤う中東地域の富豪であれば「富は分かち合うべし」というイスラムの教えを都合よく解釈してterrorist finance(テロ組織への資金供与)に関与することだろう。麻薬の密売組織なら、不正な手段で稼いだ金の出所を隠すための資金洗浄が目的となる。顧客が民間人であれば、上に引いた日本人詐欺師のようなケースだろう。では、こうした限りなく黒に近いグレーゾーンに隠された資金はどれくらいあるのか。カリフォルニア大学バークレー校のガブリエル・ザックマン(GabrielZucman)教授の推定では、世界全体の金融資産の約8%はどこかの租税回避地にあり、総額は7兆6,000億ドルに達するという。パナマ文書で暴露されたのは、その氷山の一角、いや氷のひとかけにすぎない。またアメリカの場合は州によって会社設立の手続きや金融取引規制が異なるため、一部の州(具体的にはネバダ州やデラウエア州など)はonshore tax haven(国内租税回避地)として利用されている。New York Times国際版は4月7日付の論説で、パナマ文書によって「国際金融システムの抜け道や穴に巣食う巨大産業」が暴かれたとしつつ、最も深刻なのは政治的ダメージだろうと次のように書いている。138 2016 JUNE